氷点下に達する日が多くなってきた。
木々がひっそり、パキパキと音を鳴らしている。
雪が降っているけれど、明るさのある空を見て歩き出す。
木道には薄く積もった雪に先人の足跡がある。
まだ朝早いから宿の客人のものだろうか。
しばらく歩いていると、お供であった足跡が突然消えた。
ここで引き返したのかな。と足をすすめるが、ふりかえる。
あれ?戻りの足跡はなかったような…
背筋がひやりとする。
霧も出ているので今日は引き返そうか、
そう考えているうちに湿原の対岸の雲間から光が差してきた。
大丈夫…ふたたび歩き始める。
凍るような空気が肺に入るたび身体が洗われるようで心地よい。
一周終えるころには手足の先の感覚がなくなり、早く辿り着かなければと早足となる。
何かの気配を感じ、足を止める。
鹿が1頭こちらを見ている。
寒いね。もう冬が来るよ。
Painting& Words:Kiho
2021-12-15